岡山大空襲

アメリカ軍による日本本土への激しい空襲で、全国主要都市の殆どが灰燼に帰しました。機銃掃射や艦砲射撃も、被害者数の増加に拍車をかけました。若者は戦地に出ていますから、被害者は女・子供に年配者でした。東京大空襲は死者10万，負傷者11万，焼失家屋26万8千戸と云われていますが、被害の正確な数値は未だに不明が実態です。 　 岡山が空襲に見舞われたのは昭和20年６月29日午前２時頃。爆撃機Ｂ29約70機が焼夷弾を投下、市街はアッと言う間もなく一瞬にして猛火に包まれ、市街地の中心部80％が焼き尽くされました。死者1737名。罹災人口12万名。罹災家屋25,000戸。（『岡山市史』） 当然、殆どの文化的施設も一瞬にして、倒壊、壊滅、全焼しました。

昭和20年（1945）８月　　（空襲は６月末） 烏城側から撮影している。背後は後楽園の森。

戦前は、学校と新聞等メディアが競って軍国少年を育て、戦勝気分を煽りました。懐疑的な言動をする者には「非国民」と罵声を浴びせかけ、言論抑圧をしました。戦後も同じです。学校と新聞等メディアは平和主義を唱い、戦勝国史観（日本は戦犯国で残虐非道な国家。被災は当然の報いで、責任は日本政府にある。）に懐疑的な態度を表す者には「平和の敵」「危険思想」「軍国主義者」と罵り、言論抑圧をしてきました。ネットの普及は真偽が混沌とした情報過多状況を生み多くの問題を孕んでいますが、少なくとも、既存のメディアによる誘導操作が難しくなってきたことは喜ばしいことです。日本が過った道を選ばぬためにも、メディアは偏った思想にもとづく報道や倫理観の押し付けは避けた方が良さそうです。 　　何れにしても、連合国軍による無差別爆撃は誤りです。一般市民、非戦闘員の大量殺戮です。貴重な文化遺産が壊滅です。日本のほとんどの主要な都市が空襲に遭いました。岡山のような中規模都市ですらこの惨状ですから、日本国としての被害総額は測りしれません。その惨劇を眺めながら、更に８月、広島、長崎に原子爆弾が落とされました。

県庁通りを烏城側から撮影。焼け野原となった街の向こうに、焼け残ったコンクリート建築の建物が廃墟のように並ぶ。左端が天満屋、中央が、中国銀行。鉄筋の建物だけが外形のみをとどめている。右手前の敷地に、今は県立図書館が建っている。

戦後すぐに、京都や奈良が空襲を受けなかった理由は、「文化財保護という連合国側の配慮のお陰」という話が流布されました。誰が流布したのか分かりません。いまだに信じている人がいます。事実は、連合国が京都や奈良の歴史文化に敬意を払ったお陰ではありません。この流布の根拠はウォーナーリストから京都・奈良が外されたことによりますが、ウォーナーリストとは、戦争終結後に連合国側が要求されるであろう賠償弁済の試算資料のことです。要するに、京都や奈良を爆撃すれば、文化財破壊により多額の賠償金を日本に支払う羽目になると、連合国側が判断したということです。 （全国で膨大な数の文化財が破壊されましたが、日本は勿論、賠償金を一斎要求していません。戦勝国史観の人は、日本が全面降伏したのだから当然だと言います。）